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腫れ、むくみとは?

腫れ、むくみとは?

監修:広島大学皮膚科学 教授 秀 道広先生

腫れやむくみをチェックしましょう

朝、目が覚めて鏡を見たら、睡眠不足や水分のとり過ぎで、「まぶたが腫れている!」、「むくんで指輪がはずれない!」、長時間同じ姿勢で立ったり座ったりしていて、夕方になると「足がむくんでいる!」…多くの方は、そんな経験をしたことがあるでしょう。このように日常的に起こる腫れやむくみに、何かの病気が隠れていることがあります。本サイトでは、腫れやむくみに関する情報をお伝えします。

腫れやむくみをチェックしましょう

腫れ、むくみとは?

腫れとむくみはよく似ています。「腫れる(腫脹しゅちょう)」というのは、炎症などが原因でからだの一部、例えば皮膚のある部分で血液の量が増加して膨らむことをいいます。赤くなったり、熱をもっているように感じたり、痛んだりします。「むくみ」というのは、何らかの原因によって、皮膚ないし皮膚の下に水分が溜まった状態です。血液中の水分が血管の外に異常に浸み出した状態で、少し専門的な言葉では「浮腫ふしゅ」ともいいます。

血管性浮腫の原因となる血管の変化

腫れ、むくみのタイプ

起こる原因によって、腫れ、むくみのタイプが異なります。
医学的には、腫れ、むくみは、起こる場所によって大きく2つのタイプに分けられます。からだの左右両側、すなわち全身に起きる場合を「両側性りょうそくせい(全身性)」、からだの片側だけといった限定した場所に起きる場合を「片側性へんそくせい(局在性)」と呼びます。

さらに、腫れ、むくみの性質によっても2つのタイプに分けられます。指で数秒間押して放したとき、ペコッとへこんでしばらく元に戻らないのが「圧痕性あっこんせい」、すぐに元に戻って跡が残らないのが「非圧痕性ひあっこんせい」といいます。
例えば、夕方になって、「足がパンパンにむくんでいるわ!」というときは、おそらく両足が同じようにむくんでいる「両側性(全身性)」のむくみでしょう。そして、向こうずねを指で数秒間押すと、押した跡(圧痕)がついてなかなか消えない「圧痕性」のむくみでしょう。また、靴下の跡がくっきり…というむくみの場合も「圧痕性」といえるでしょう。

自分の悩んでいる腫れ、むくみがどんなタイプなのかを知っておくと、医師に相談するときに役立つかもしれません。

腫れ、むくみのタイプ

あなたの腫れ、むくみのチェックポイント

  • ①腫れやむくみは、どこに起きますか?
  • ②腫れやむくみは、全身性(両手や両足)ですか、または局在性(片手や片足、部分的)ですか?
  • ③指で強く押したとき、へこんでもすぐに元に戻りますか?
  • ④いつ、腫れやむくみが出ますか(朝ですか、夕方ですか)? 消えるタイミングは?
  • ⑤腫れやむくみが、よく出るきっかけはありますか?
  •  例えば、ある食べ物を食べたときや薬を飲んだときに、腫れやむくみが出る…など

むくみに隠れるこんな病気

腫れやむくみは健康な人でも起こります。加齢でも生じますし、妊娠中にも一般的にみられる現象です。健康な人では、水分と塩分の摂取を控えめにし、からだを冷やさないようにするといった対策をとれば、ある程度むくみを予防することができるでしょう。女性では足のむくみで悩んでいる方が多いかもしれません。

では、どんなむくみに注意したらよいのでしょう?

むくみに隠れるこんな病気

1全身性で、指で押すとへこんでしばらく元に戻らないむくみの代表例

全身性のむくみを起こす、代表的な病気に、心臓、肝臓や腎臓の病気があります。写真は腎臓の病気の方のむくみの写真です。指で押した跡がくっきりと残っているのがわかるでしょう。むくみだけでなく、呼吸が苦しい、息切れ、動悸、胸痛、尿の出が悪い、疲れやすいといった症状があるときは、かかりつけ医やお近くの医療機関を受診してご相談ください。

全身性で、指で押すとへこんでしばらく元にもどらないむくみの代表例
腎性浮腫
腎性浮腫

心臓は血液の循環を調節しています。心臓のポンプの働きが低下すると、全身へ血液を上手に送れなくなります。血液のめぐりが悪くなって水分がからだに溜まり、むくみがあらわれます。

肝臓は、食べたものをエネルギーに変えたり、アルコールや薬、老廃物を分解したり、胆汁という消化液を作り脂肪の吸収を助けたりします。肝臓で作られるアルブミンというタンパク質は、血液中(血清)の総タンパク質の約60%を占め、血液中の水分を一定に保つ役割があります。肝臓の機能が低下してアルブミンが少なくなると、血液中の水分が血管の外へ出やすくなり、むくみがあらわれます。

腎臓は、からだの水分を調節し、老廃物を尿として排泄します。腎臓の機能が低下すると、からだの中の余分な水分を尿として排出できなくなり、からだに溜まった余分な水分によりむくみがあらわれます。

また、ネフローゼ症候群といって、何らかの原因で腎臓に障害が起こり、血液中のタンパク質が尿中へ漏れ出てしまうようになると、血液中のタンパク質が少なくなります。その結果、血液中の水分が血管の外に漏れるようになり、むくみが起こります。

2全身性で、指で押しても跡が残らないようなむくみの代表例

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの産生・分泌が低下し、寒がりになる、皮膚の乾燥、汗をかきにくくなる、便秘、むくみ、体重増加、眠たくなるなどの症状をきたす病気です。

粘液水腫ねんえきすいしゅといわれる、指で押しても跡が残らないようなむくみが起こるのも特徴です。

②全身性で、指で押しても跡が残らないようなむくみの代表例

3局在性で、指で押すとへこんでしばらく元に戻らないむくみの代表例

足のむくみでも、飛行機に長時間乗った後などに急に片方の足がむくんだ場合は、要注意です。深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群の可能性があります。同じ姿勢でじっとしていて、水分が不足していると、血液の流れが悪くなり、静脈の中に血のかたまり(血栓)ができてしまい、血管がふさがれてしまうのです。血栓がつまったほうの足だけがむくむことになります。こんなときは、すぐに医療機関を受診してください。

③局在性で、指で押すとへこんでしばらく元に戻らないむくみの代表例

4局在性で、指で押しても跡が残らないようなむくみの代表例

じんま疹は、皮膚の一部が急に赤くなり、蚊に刺されたときのようなぷっくりとした境界明瞭な皮膚のふくらみ(むくみ)が急にあらわれる病気です。アレルギー性のじんま疹は、食べ物、薬、植物(天然ゴム製品を含む)、昆虫の毒素などを原因として、数分から数時間以内に起こります。

④局在性で、指で押しても跡が残らないようなむくみの代表例

じんま疹とよく似た症状を示すものに、血管性浮腫けっかんせいふしゅがあります。血管性浮腫は、急に皮膚が腫れたりむくんだりして数日で消えることが特徴です。皮膚のどこにでも生じますが、特にまぶたやくちびるに多くみられます。皮膚以外に口の中や舌、のど、消化管などにも起こることがあります。消化管が腫れると、お腹が痛くなったり吐き気が生じたりすることもあります。また、のどが腫れると息がしづらくなり、窒息するおそれがあるので危険です。顔面やくちびる周囲が腫れたときは、顔に続いてのどが腫れることがあるので、救急外来を受診してください。

※血管性浮腫は、1882年にドイツ人医師クインケによって最初に報告されたため、別名「クインケ浮腫」とも呼ばれています。

血管性浮腫は色々な原因から起こりますが、その1つに遺伝性の珍しい病気があります。急に手足や顔が腫れたりむくんだりして数日で消える、その腫れやむくみにはかゆみはない、2、3日原因不明の腹痛が続いたりする、といった症状をくり返す場合、特に同様の症状がご家族・ご親戚の方にもみられる場合は、「腫れ・むくみをくり返す体質」かもしれません。

※血管性浮腫は、1882年にドイツ人医師クインケによって最初に報告されたため、別名「クインケ浮腫」とも呼ばれています。

腫れ、むくみが原因の腹痛

腹痛は、日常よく経験する症状です。夏の暑いときに冷たい物を飲み過ぎたり、食べ過ぎたりすると、お腹が痛くなるときがあります。便秘や生理による腹痛に悩まれている女性もいるでしょう。会議で大勢の前で発表しなくてはならないときや、大事な試験の前には、ストレスでお腹が痛くなることもあるでしょう。また、虫垂炎のように緊急の手術を要する病気もあります。

このほか、とても珍しいのですが、皮膚の腫れやむくみと同じ原因で起こる腹痛があります。「腫れ・むくみをくり返す体質」の方は、お腹の中で消化管(胃、小腸、大腸など)が腫れて、突然、激しい腹痛が起こることがあります。この腹痛は2、3日続くことがあります。

皮膚の腫れ、むくみを起こしたことがある方で、くり返す原因不明の腹痛も経験したことがあるときは、「腫れ・むくみをくり返す体質」が原因かもしれません。

腫れ、むくみが原因の腹痛

「腫れ・むくみをくり返す体質」=「遺伝性血管性浮腫いでんせいけっかんせいふしゅ(HAE)エイチ・エー・イー

「腫れ・むくみをくり返す体質」は「遺伝性血管性浮腫」という病気である可能性があります。「遺伝性血管性浮腫」は英語で「Hereditary angioedema」といいますので、略して「HAE」とエイチ・エー・イー呼ばれています。
⇒くわしくは、HAEとは

遺伝性血管性浮腫(HAE)のほとんどの患者さんでは、生まれつき、C1シーワンインヒビターというタンパク質の量が少なかったり、働きが弱かったりすることが知られています。

C1インヒビターは、血液中に存在して、免疫の一部を担っています。免疫とは、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入したときに反応し、からだを守る働きです。我々の体内にある免疫システムの中には“補体系”ほたいけいというシステムがあります。ところが補体系は、時として自分自身を攻撃してしまうことがあり、C1インヒビターは、このような過剰な補体系の働きを制限するタンパク質です。そして、C1インヒビターは補体系で働くだけでなく、カリクレイン・キニン系※1凝固ぎょうこ・線溶系せんようけい※2などにも働いて、これらのしくみが強くなり過ぎないよう、ブレーキ(抑制)をかける重要な役割を担っています。

C1インヒビターの量が少なく、うまく働かないと、その結果、からだの中で「ブラジキニン」という物質が増えます。

「ブラジキニン」には腫れを起こしたり、強い痛みを引き起こしたりする作用があります。この「ブラジキニン」が増え過ぎることによって、患者さんの腫れや痛みが起こると考えられています。
⇒くわしくは、C1インヒビターとブラジキニン

この「遺伝性血管性浮腫(HAE)」では、命にかかわる「のどの腫れ」が起こることもあります。のどの腫れが重度になると、窒息して命を落とす可能性もあります。

しかし、「遺伝性血管性浮腫(HAE)」は、自分の体質を知り、きちんと準備すれば、適切な治療を受けることができる病気です。「もしかして」と思ったら、かかりつけ医やお近くの医療機関を訪ねましょう。当サイトのチェックシートでご自身の状態をチェックし、そのチェックシートを持って、相談・受診してみるのもよいかもしれません。
⇒くわしくは、腫れ・痛み チェックシート

※1
カリクレイン・キニン系;血液中でブラジキニンという物質を作るしくみのことで、ブラジキニンは血液中の水分を血管の外に浸み出しやすくして浮腫を起こすほか、強力な痛みを引き起こす作用があります。
※2
凝固・線溶系;血管が損傷して出血した場合に血が固まるしくみ(凝固系)と、固まった血がいらなくなった場合に溶かすしくみ(線溶系)のことで、ブラジキニンが作られるのを助ける働きもあります。