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HAEの原因

HAEエイチ・エー・イーの原因

監修:九州大学病院別府病院 病院長 堀内 孝彦先生

HAEエイチ・エー・イー原因は「遺伝子の異常」

遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さんのほとんどは、生まれつき、C1インヒビターというタンパク質の量が少なかったり、働きが弱かったりすることが知られています。

からだの中で働く色々なタンパク質は、それぞれの遺伝子が持っている情報に従って作られます。したがって、遺伝子が持っている情報が欠けていたり、間違っていたりすると、うまくタンパク質が作られません。患者さんは、遺伝子の異常が主な原因で、C1インヒビターが少なかったり、働きが弱かったりします。

C1インヒビターとブラジキニン

C1インヒビターが不足したり働きが弱かったりすると、なぜ遺伝性血管性浮腫(HAE)の症状があらわれるのでしょうか?

C1インヒビターは、血液中に存在して、免疫の一部を担っています。免疫とは、ウイルスなどの異物が侵入したときにすぐに反応することで、からだを守る働きです。C1インヒビターは、ウイルスなどの感染に対する防御を補助する“補体系ほたいけい”というシステムで働くタンパク質の1つです。また、C1インヒビターは、補体系だけではなく、カリクレイン・キニン系※1凝固ぎょうこ・線溶系せんようけい※2というシステムなどでも働いています。C1インヒビターは、これらのシステムが強く働き過ぎないよう、ブレーキ(抑制)をかける重要な役割を担っています。「インヒビター」とは、英語で「阻害するもの」という意味です。

C1インヒビターの量が少なく、うまく働かないと、からだの中で「ブラジキニン」という物質が増えます。「ブラジキニン」はブラジキニン受容体※3にくっつくと、腫れやむくみ(浮腫)を起こしたり、強い痛みを引き起こしたりする作用があります。この「ブラジキニン」が増え過ぎることによって、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さんの腫れや痛みが起こるといわれています。

健康な人では、からだの中でC1インヒビターが作られる量と使われる量のバランスが取れています。一方、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さんでは、C1インヒビターが常に不足した状態または働きが弱い状態にあります。C1インヒビターが全く作られない、全く働かないというわけではないので、通常は、少ないC1インヒビターを何とかやりくりしています。しかし、ストレスや疲労が溜まったり、歯科治療や外科手術を受けたりすると、C1インヒビターの使われる量が多くなってしまいます。C1インヒビターが不足してしまうと、「C1インヒビターによるブレーキ作用」が弱まり、「ブラジキニン」が過剰に作られて、浮腫や腹痛が起こってしまうと考えられているのです(図)。

図 C1インヒビターとブラジキニン
図 C1インヒビターとブラジキニン
※1
カリクレイン・キニン系:血液中でブラジキニンという物質を作るしくみのことで、ブラジキニンは血液中の水分を血管の外に浸み出しやすくして浮腫を起こすほか、強力な痛みを引き起こす作用があります。
※2
凝固・線溶系:血管が損傷して出血した場合に血が固まるしくみ(凝固系)と、固まった血がいらなくなった場合に溶かすしくみ(線溶系)のことで、ブラジキニンが作られるのを助ける働きもあります。
※3
ブラジキニン受容体:からだの中の細胞にあるタンパク質の1つで、血管に存在しています。このブラジキニン受容体にブラジキニンがくっつくと、からだに腫れやむくみ(浮腫)が起きたり、強い痛みが起きたりします。

HAEエイチ・エー・イータイプ

遺伝性血管性浮腫(HAE)は、Ⅰ〜Ⅲ型の3つのタイプ(病型)に分類されます。
ほとんどの患者さんはⅠ型またはⅡ型です。Ⅲ型はごく少数と考えられています。

Ⅰ型

遺伝子の異常によって、C1インヒビターの作られる量が少ないタイプ。

Ⅱ型

遺伝子の異常によって、C1インヒビターの働きが弱いタイプ(作られる量は正常)。

Ⅲ型

原因がくわしくはわかっていない、珍しいタイプ。